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社会変革福祉集団ほっとポットに見る専門エリート意識

 特定非営利活動法人「ほっとポット」が、これまでの古典的な社会変革とは全く異なるかたちで社会変革を推し進めようとしている。これまで社会変革と言えば、政治システム、経済システム、法システムを変えるという方向が多かった。しかし、成熟社会に入り、福祉システムを変革することが社会変革の中心になってきた。その象徴が、まさしく特定非営利活動法人「ほっとポット」の支援活動である。
 「反貧困ネットワークの実践」という書物に活動の理念や実績が克明に書かれている。
 福祉の壁、つまり住所がないと生活保護の申請ができないという虚構を見抜き、家主等の協力者と組んでホームレスを保護し、自立に導いている。実に、素晴らしい実践である。
 その本質は、被支援者が求めるものを分野を越えてコーディネイトするジェネラルソーシャルワークという理念である。福祉事務所は、支援対象者を分類し、一つのカテゴリーに押し込め、型にはまらないと排除するという方法をとって来た。福祉の水際作戦の底流に流れる分類主義である。ほっとポットは、そのような福祉行政を全て否定する。
 多くの支援対象者=ホームレスなどは、病気、住居、高齢、家庭問題、就労問題など、関連する複数の問題を抱えている。ほっとポットにおいては、これらを分割して支援するのではなく、支援対象個人に集点を当てて、トータル・コーディネイトするわけである。例えば、就労するためには、住居が必要であり、病気治療も必要である。単に職業安定所にいけと言っても、住所がないので職を紹介できませんとか、病気の人を雇ってくれる会社はないと言われるので、住居の確保からはじめ、医療、就労へと広げていくことになる。公的相談機関は、問題を分類し、バラバラに捉えて措置することで、適切に援助できないわけであるが、ほっとポットが援助の中心となることで、各々の分野の相談機関の支援を有機的に連動し、真に支援対象者を助けることが可能となるのである。

 さて、社会学的な立場から、ほっとポットの若者たちに関して非常に興味をもったのは、自分たちの専門性と資格へのこだわりである。社会福祉士という国家から付与された専門性と資格こそが彼らを支えているという事実である。ほっとポットの若者が高い倫理性と志をもち、活動を続けている理由は、社会システムから付与された専門的役割と社会的使命感に基づいているからである。それは、法システムの専門家である弁護士が社会運動するのと似ているのである。無資格のボランティアではなく、社会福祉学という人間科学を学んだ専門家だという誇りが、専門エリート意識をもたらし、彼らの活動を動機付けているのである。
 特定の分野に置いて、特別な存在として社会的に自尊心を満たすことができること、これは非常に社会学的には高い動機付けの仕組みである。臨床心理士や精神保健福祉士などにも、同様の専門エリート意識がある。もはや学歴が自尊心の根拠になるのではなく、専門的資格が自尊心の根拠となっている。
 反貧困創始者の湯浅氏は東大法学部卒の学歴を有し、社会を実体化し社会責任説を唱えるなど古典的な社会観にとらわれている。ほっとポットは全く違っている。学歴ではなく、社会福祉士という資格をもつ者こそが社会変革の中心なのである!! 
 今後、(社会責任/自己責任)という社会的に構築された区別に拘らず、社会福祉士の使命として、求める支援対象者に対して平等に支援してくれることを期待したい。
 
 現在、大学では、人間科学系や福祉系の学部が多く出来ている。社会福祉士、精神保健福祉士、臨床心理士などの資格をとることで、社会から肯定され、専門エリートとして育成されるのである。
 序列のある学歴社会から対等な専門職が活躍する社会への移行、これは教育社会学者・本田氏の理想でもあるのである。
 今後、福祉会のスターである、ほっとポットに憧れる福祉系の若者たちが増え、社会福祉士の資格に魅了されていくであろう。社会主義や新興宗教に走る救済者願望の強い意味系の若者たちが、成熟社会の花形職業である福祉職に流れ込み、社会から生きる意味=使命感を与えられ、無害化されることを期待したい。

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by merca | 2010-07-11 11:48 | 社会分析
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