代替医療としての臨床心理士の心理療法

 一部の臨床心理士は、ホメオパシーを使用しているらしい。「ホメオパシー」と「臨床心理士」を一緒にネット検索したら割とヒットする。私の知合いの臨床心理士に聞いたら、自らレメディを使用し、ホメオパシーは偽薬効果でないと断言した。驚いた。

 臨床心理学という人間科学は、心理学的に実証された知識や理論を応用して、心の病や精神的な悩みを解消する学問であると習ったし、実際、そうであると考えたい。臨床心理士を目指す女子大生はかなり多く、今や花形職業である。
 実際、臨床心理士は精神病院に勤務することが多く、薬物療法の補助としてカウンセリングなどの心理療法を行っている。認知行動療法やSSTなどは、心理療法のなかでもよく使用されている。聞く所によると、刑務所などでも性犯罪者の改善更生のために利用しているという。国家が科学として心理療法たる認知行動療法を認めているということである。ちなみに、統計大好きの犯罪学者浜井浩一氏は臨床心理士でもある。
 しかし、未だに臨床心理士の心理療法には保険が利かず、代替医療の枠組みで扱われているのである。厚労省の官僚たち=国家は、易々と臨床心理士に科学のお墨付きを与えないようである。
 確か日本の臨床心理学の祖は、ユング系の心理学者河合隼雄であり、大乗仏教思想が色濃いスピリチュアル系の学者である。河合隼雄の「カウンセリングの実際問題」は名著であり、多くの和製カウンセラーに多大な影響を与えてきた。

 科学的に実証されていないが、医療現場で使用されている様々な代替医療が存在する。鍼灸、アロマセラピー、指圧、漢方、カイロプラテックなどもそうであり、臨床心理士による心理療法もその一つである。また、ホメオパシーもそうである。西洋医学と比べれば、心理療法とホメオパシーは、代替医療としてカテゴライズされており、機能的に等価だと思われている。
 ニセ科学批判者は、代替医療が全て偽薬効果だと言わんばかりであるが、当の偽薬効果という理論そのものが科学的に解明されておらず、代替医療と科学的にレベルは同じなのである。もしニセ科学批判者が科学的に解明されていない=科学的に根拠がない、という理由でホメオパシーや鍼灸を批判するのなら、同時に偽薬効果理論も否定しなければ、自己矛盾を起こすことになる。正しく目くそ鼻くそを笑うの関係になってしまう。

 代替医療の中で果たして治療効果のあるものが本当に存在するのだろうか?唯一あるとしたら、精神分析学による心理療法だけであると考えられる。例えば、心理的原因でヒステリー症状を起こす場合、心理的原因は本人自身が無意識を意識化して気づくものであり、悩みの原因が分かれば、その結果を取り除くことができるからである。心理過程のみにおける因果関係は当の患者本人が知っており、患者本人からカウンセリングで聴く以外、因果関係を見つけることができないからである。
 
 実は、精神分析学の方が自然科学よりも因果確定が安定的なのである。治療対象に因果関係を聞くことができるわけであり、自然科学のように外から観察して疑似相関に騙されたりすることがないからである。精神現象=意味世界の現象は、対象自身が自らの因果関係を認識できるわけであり、この利点は大きい。不眠症を治療するのに、不眠症患者に睡眠薬を与えるのではなく、なぜ悩んでいるか聞いてやり、心理的原因を除去してやり、安心すると眠るのである。精神分析による心理療法は個別的因果関係による個別的なメカニズムを解明するわけであり、自然科学よりも科学的なのである。精神現象=意味世界は、自然科学のような普遍的因果関係(法則)に支配されておらず、個別的因果関係に支配されているのである。個人の内面=意味世界の個別的因果関係は、精神分析学によるカウンセリングによって治療者と被治療者が共同で見つけ出すものなのである。
 ポパーの科学観は、個別的因果関係を無視しており、端的に誤っているのである。フロイトの偉大さに気づいていない。また、意味論的因果関係から構成されている社会システムについても、自然科学的な普遍的因果関係(法則)からは認識できないのである。
 とにかく、心理的次元の病は心理的因果関係の解明と心理的はたらきかけで治療効果が出るのであり、心理療法は科学的なのである。身体的次元の病は西洋医学が効果的であるが、心理的次元の病は代替医療でも治療効果があるかもしれないのである。

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by merca | 2011-02-02 23:37 | ニセ科学批判批判 | Comments(0)
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