社会調査法批判

 社会調査法の技法(統計)に基づき、社会を測定し、様々な社会論が横行している。社会調査によるデータのない社会理論は観念論として退けられる傾向にある。
 しかし、よく考えて見たまえ。社会調査法によって社会を測定するという発想そのものが、おかしい。社会という対象があらかじめ実体として存在し、それを統計的手法によって測定しているということであるが、この考えは過っている。
 というのは、実際は逆だからである。実は、社会学者は、人々の意識や所得などを指標として調査し、項目間の相関関係を見い出し、事後的に社会という対象を構成するからである。社会は、社会調査を媒介として、事後構成されたもの、つくられたものなのである。社会という対象があり、それを測定し、認識するというのではないのである。社会調査法は社会を写し取るのではなく、逆に社会を構成するための方法なのである。

 統計的手法に基づいて様々な社会論が溢れているが、これらは全て学者によって構成された社会であり、実体としては存在しないのである。しかし、それらを本当に社会を写し取ったものとして錯覚している者たちが、その社会観に準拠する区別でコミュニケーションする時、システムとして創発され、それが本当に実在してしまうおそれがあるのである。例えば、(上流/下流)という区別にこだわり、人々がコミュニケート(例えば消費行為)しだしら、それがシステムとして創発され、実在してしまうのである。

 ともあれ、社会調査法は、社会を測定する技法ではなく、社会を構成する技法なのである。
[PR]
by merca | 2006-05-26 21:13 | 理論 | Comments(2)
Commented by telomere at 2014-03-04 16:42 x
>「社会調査法の技法(統計)に基づき、社会を測定し、様々な社会論が横行している」

アメリカの社会学はそうかもしれませんが、日本の社会学はそうとは言い切れません。階層/家族/教育を除いて、計量研究は少数派です。むしろ歴史/言説/エスノグラフィーなどが主流です。その意味で、「社会調査法が社会を構成する」と批判するのであれば、これら歴史/言説/エスノグラフィー系の研究の恣意性や構成性を批判した方が良いでしょう。
Commented by telomere at 2014-03-04 17:44 x
ちなみに、轟・杉野編2013『入門・社会調査法第2版』:31には、こんな記述があります。質的調査(社会構築主義も含む)と量的調査の区分について書かれたものです。

「歴史社会学者の佐藤健二は<中略>、質的調査がしばしば対立物として量的調査のステレオタイプを作りあげ、あたかもそうした「量的調査」がこれまで支配的であったかのように批判することに対しても、「その抽象的な大文字性への無自覚な依存において批判されなければならない」と述べる。」
<< 成熟社会という物語 社会はつくられる >>