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社会調査法批判

 社会調査法の技法(統計)に基づき、社会を測定し、様々な社会論が横行している。社会調査によるデータのない社会理論は観念論として退けられる傾向にある。
 しかし、よく考えて見たまえ。社会調査法によって社会を測定するという発想そのものが、おかしい。社会という対象があらかじめ実体として存在し、それを統計的手法によって測定しているということであるが、この考えは過っている。
 というのは、実際は逆だからである。実は、社会学者は、人々の意識や所得などを指標として調査し、項目間の相関関係を見い出し、事後的に社会という対象を構成するからである。社会は、社会調査を媒介として、事後構成されたもの、つくられたものなのである。社会という対象があり、それを測定し、認識するというのではないのである。社会調査法は社会を写し取るのではなく、逆に社会を構成するための方法なのである。

 統計的手法に基づいて様々な社会論が溢れているが、これらは全て学者によって構成された社会であり、実体としては存在しないのである。しかし、それらを本当に社会を写し取ったものとして錯覚している者たちが、その社会観に準拠する区別でコミュニケーションする時、システムとして創発され、それが本当に実在してしまうおそれがあるのである。例えば、(上流/下流)という区別にこだわり、人々がコミュニケート(例えば消費行為)しだしら、それがシステムとして創発され、実在してしまうのである。

 ともあれ、社会調査法は、社会を測定する技法ではなく、社会を構成する技法なのである。
by merca | 2006-05-26 21:13 | 理論
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