学校には、勉強をすることと、友達をつくることという二つの意味や機能がある。前者は、組織としてのゲゼルシャフト的な側面である。後者は、共同体としてのゲマインシャフト的側面である。生徒も教師も、(勉強/友達)という区別に準拠して、学校を観察し、コミュニケーションを創発している。それが学校という空間であった。
しかし、友達関係に挫折した不登校児童はいじめの巣窟であるクラスを拒否し、授業についていけない非行少年も勉強をあきらめ授業を放棄したり妨害したりする。いずれも、学校という場に行く理由を喪失している。 しかし、その受皿として機能しているものがある。単位制(通信制も含む)高校である。非行系も不登校系も混在して受け入れている単位制高校の社会的役割は大きい。 いじめの処方箋として、閉鎖的な対面的小集団を発生させるクラス制をなくすという考えがある。この考えは、クラス制がなく、大学のように自己選択的に授業でることができる単位制高校で実現されており、いじめが発生しにくいシステムとなっている。実際、中学でいじめで不登校になっていたり、いじめで高校中退になった若者達が主体的に選択し、単位制高校に入学している。 全日制高校と単位制高校でのいじめの発生率を正確に測定した社会調査はまだないが、「単位制高校 いじめ」でネット検索すると、いじめを受けていて単位制高校で救われたという体験談が多く見受けられ、質的データとしては、有効だと思われる。 いじめが集団現象だとすると、単位制高校では、仲間集団が発生しにくく、原理的・論理的にもいじめが発生することはほとんどない。単位制高校でいじめが発生しないのなら、社会学者・内藤朝雄による社会学仮説(中間集団全体主義や共同体主義的学校運営がいじめの原因)が実証されたことになる。 文科省は、単位制高校の存在が、いじめ防止の最大の処方箋だと気づいていないのだうか? また、単位制高校はいじめ防止の処方箋になるばかりか、非行系の若者の学歴取得場所としても機能している。非行系の若者は、中卒後も、元中学同級生との交友を中心とするため、全日制高校に進学しても、新しい友達をつくらず、学校が面白く無くなってしまう。また、染髪や服装違反などの校則違反ですぐに高校教師と対立し、やめてしまう傾向にある。単位制高校は、染髪や服装などは自由であり、非行系の少年が教師と対立することは少ない。また、集団化できないので、授業妨害もおこらない。さらに、週に2、3日ほど登校すればいいので、拘束時間が短く、その分、元中学同級生と遊ぶことのできる時間もある。そんなわけで、非行系の少年も単位制高校なら適応できる。実際、非行で高校中退して単位制高校に行くという話はよく聞く。集団化しないので、非行系の若者も不登校系の若者をいじめたりしにくい。 このように、単位制高校では、いじめや集団非行など、あらゆる集団現象から発生する学校内問題行動を抑止でき、学業成就という目的を達成できるのである。社会学的には、単位制高校は、学習の場として機能的に純化されたゲゼルシャフト組織なのである。学業の他にも、仲間づくりというゲマインシャフト機能が混在している未分化な既存の全日制高校とは異なるのである。 一つの社会組織が複数の機能を担う時代は終わりであり、学校に学習機能と友達作り機能を担わすべきではないかもしれない。学習機能と友達作り機能を分離し、それぞれ違う社会的セクションが担当すべきだと思うのである。その意味で、一定の年齢からは、学校は単位制高校という形態にし純粋に学習機能に絞り、友達をつくる場は全く別に設けたほうがよさそうである。ちなみに、塾が学習機能を学校から奪ったせいで、学校がよけいに生徒にとって友達をつくる場になってしまったのかもしれない。 単位制高校がいじめ防止の有効な処方箋であることを科学的に実証するためには、次の調査が必要です。 ・全日制高校と単位制高校でのいじめの発生率を正確に測定した社会調査。 ・単位制高校への入学理由に関する社会調査。 上記の社会調査がもしあったら、教えて下さい。
by merca
| 2007-06-06 23:44
| 社会分析
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