科学は、相対的な知識であると同時に、絶対的な方法的規準である。この二重性を認識する哲学的センスがないと、すべての議論はわかりにくくなる。 科学の歴史において、科学的真理として当初はフロギストン説が採用され、後に酸素説が採用されて、現在に至っている。しかし、フロギストン説を唱えた学者も科学的方法に準じていたわけであり、科学も間違うことがある相対的知識である。従って、科学者のうちでは、科学は絶対主義だとはみなされていない。こう主張されたいのだと思う。 しかし、よくよく考えてみると、ある科学的知識の真偽を判定するのは、宗教や民主主義ではなく、当の科学的規準(科学者)であるので、結局、原理的に科学は自己準拠していることになる。科学は、自らの過ちを自己判断する閉鎖システムなのである。他に依存せずに閉じているという意味では、絶対的なのである。 正しい知識が更新されていくというだけで、相対主義というわけでない。科学的手順に従った適切で説明能力の高い別の学説が現れると、従前の学説を破棄して新しい学説に忠実に従わなければならないという絶対性・規範性をもつことになる。矛盾した学説の同時的真理性は認めらていない。常に真理のスペースは一つであるという理念によって発展・進化している。(形式的唯一性)。まさしく、真理という唯一の席を巡って様々な学説が闘争し,世代交代して知識が更新されていくという変動的な相対性こそが科学の絶対性の本質なのである。この唯一性を巡っての競争こそが科学者を研究へと動機付けるわけである。このように、真理は一つという観念がないと、科学は発展はなかったと思われる。菊池さんや天羽さんなどの個々の科学者が主観的に科学を絶対視していないと思うのと、科学にもともと内在する論理とは次元を異にするのである。 科学は、近代的知識の特徴をよく備えており、民主主義や資本主義も同様な構造をもつ。浅田彰の「構造と力」で、近代特有のこのからくりが解明されている。資本の論理と科学の論理が同じ形式的構造をもつことは、ポストモダンの思想家などがよく指摘するところである。 ただ、私も上記のようなポストモダンの科学観だけでは、科学は完全に捉えきれないと思っている。科学は、自然という人間の恣意性の外部との関係には開かれていると思っている。むしろそちらを尊重したい。 人気blogランキングへ
by merca
| 2008-01-14 14:39
| ニセ科学批判批判
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