他ブログでのコメントです。 http://d.hatena.ne.jp/kihamu/20070626/1182863059 真理観の相違 いつも言いますが、真理観に差異があります。これを自覚しておかないと、議論がかみ合いません。安原さんたちは、対象と認識の一致という自然科学的真理に立脚しています。つまり、社会を自然のように必然として観察する立場です。 宮台社会学のようなシステム論的視点では(私も究極のラディカル・システム論者ですが)、社会という対象を必然の相ではなく、複数の自由意思どうしの関係で創発されたものとして偶然の相で観察します。人間の相互作用によって社会はつくられたものであり、偶然の産物であるという感覚です。偶然に対しては因果法則ではなく、解釈としての物語が有効になります。社会理論も社会に対する一つの物語にしかすぎません。というよりか、物語としての機能を持ちます。物語は演じられることで、本当になり、創発されます。そのように割り切ることで、対象と認識の一致という真理観に基づく科学主義者と折り合いをつけます。二つの真理観は、同等の価値をもちます。 社会は自然のように天から与えられたものではなく、社会は人間がつくったものですから、認識するという類のものではなく、参加して演じてつくるというほうが適切ですね。これは開き直り出はなく、一つの分別・区別です。もちろん、社会を実体視する社会理論や社会思想もありますが・・・。 私は、ブログではメタ理論を書いていますが、実際のところ、社会学における質的調査を重視する臨床社会学あるいは社会病理学の立場に立っています。 後藤さんや安原さんたちにしても、統計だけでなく、例えばホームレスや累犯障害者と直接話して面接調査し、その内面的な意味世界を記述し、理論化していく作業をなされたのか疑問をもっています。統計的現実は学者によってつくられた二次構成物であり、むしろ直に調査対象と接して生の現実を観察されることをお勧めしたいですね。原爆を例に出すのも変ですが、統計だけではキノコ雲の上だけ見てその下の悲惨な現実を見ない立場です。死者の数という統計だけでは原爆の真実は伝わりません。 初期の宮台真司は、援助交際少女を対象としたインタビュー調査・質的調査を重ねた上で、議論していたようですね。それが説得力があったのだと思います。 理論社会学の本を読むと、確かに具体的事実にどう当てはまるのか、一体、何のことを指しているのかわからない場面によく出くわします。ベックに限らず、ルーマン等はその典型かもしれませんが、ヘーゲルの法哲学を読むのと同じ感覚で読んでいます。伝統的な西洋哲学の知識なしに、理論社会学を読むのは困難かと思われます。ドイツ観念論の基礎を勉強してからのほうがいいかもしれません。 欧米の社会学者だけが進んでおり正しいという先入観を捨て、もっと日本人の社会学者も勉強したいですね。そういう意味では、マクロ論理においては、富永健一の社会学だげが、唯一、概念の精緻さからして、科学として扱える可能性があると思っています。(科学だけが正しいと思っていませんが) もちろん、あまりにも質実剛健で地味なので、目立ちませんが、宮台社会学に比べると、はるかに歴史的な事実に根付いています。ポストモダンの論客はあまり目にとめていないようですがね。 おっしゃるとおり、統計調査と質的調査は、本来、相互補完的なものですね。特に、統計調査の違和感、例えば擬似相関関係は、質的調査によって見破ることができる可能性があります。 今、擬似科学批判者や後藤氏など、事実志向の論客が増えています。そこで,それに関連して興味あるのは、ブルデューです。彼は、統計調査を駆使して、社会を分析します。抽象的な理論社会学やポストモダン論を床屋談義として否定する後藤氏や安原さんたちの思想的潮流が、ブルデューをどう評価するのか興味あります。ブルデューに依拠したネット論客の登場を期待しています。 参考 例えば、援助交際の分析は、警察官や家裁調査官や保護観察官などが頻繁にその類の非行少女と接しており、膨大な量的・質的データをもっている。研究の仕事の関係上、上記のような非行専門家たちに尋ねたところ、宮台の説は違和感なく受け入れられた。後藤氏が援助交際少女と面接して調査せずに、統計だけを絶対視して、宮台氏をやみくもに批判するのは、臨床的な実証性にかけているのである。
by merca
| 2008-01-22 09:09
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