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治安悪化は本当である。(2)

 前のエントリーのごとく、統計が事実ならば、犯罪発生率はあがり、治安は悪化していると断定できる。統計だけを見ると、これは事実である。統計に基づく限りは、浜井浩一氏と芹沢一也氏の治安悪化神話社会論は、誤謬である。実は、彼らは統計に基づくのではなく、ある解釈に基づいて治安悪化神話社会論を根拠づけようとする。事実ではなく、解釈である。ここがポイントであり、多くのブロガーは統計的事実に基づいていると勘違いしている。その解釈とは次のようなものである。

 解釈は、犯罪発生率が底をついた1973年から2002年の間の犯罪増加にかかわる。この間の犯罪の増加は、警察の取締方針による認知件数の増加が原因であるという解釈である。しかし、この説が正しいためには、社会の中の犯罪と呼ばれうる行為は実際に増えていないということを前提にしなければならない。つまり、警察に認知されない犯罪数=暗数を正確に把握していてこそ主張できることになる。でないと、犯罪が増えたから認知件数が増えたという対立仮説を否定できない。認知犯罪数プラス非認知犯罪の合計が、社会の犯罪総数となる。この社会の犯罪総数は神のみぞ知る数字である。この数字を把握しないと、本当のことは言えない。治安の悪化とは、社会の犯罪総数の悪化であるという実体主義に立つとそうなる。治安悪化神話社会論者は、実体主義に依拠し、統計的な認知件数が社会の治安状況を反映するものではないとして治安悪化論を否定しつつも、その実体であるところの社会の総犯罪者数について知らない。これは一つの解釈にしかすぎない。統制強化→犯罪増加という思想である。
 しかし、警察官増員によって2002年以降犯罪が減少していることからして間違っている。治安悪化神話社会論者からすると、警察官が増員されると統制強化され、認知件数は増えるはずであるが、現実は逆であったのである。警察官が増員され、犯罪抑止につながり、犯罪が減少したのである。犯罪者が刑務所に服役したから犯罪が減ったという説もあるが、もしそうならば、それこそ警察その他刑事司法機関の力によって治安悪化を抑止していることの証明となる。もし警察がなければ治安は悪化していたことになるわけである。
 社会の犯罪総数は、神のみぞ知る超越的な数字であるが、これは質的には測定可能である。実は、実際に生活している国民のみが知っている。国民に聞くしかない。そういう意味では、国民の体感治安を知ることが社会の犯罪総数や治安悪化を推し量る意味では有効かと思われる。意識調査の結果、体感治安は悪化しているという。体感治安は、治安悪化のセンサーとして有効である。

 警察によって犯罪が減っているのに、警察によって犯罪が増えているという転倒した社会認識でもって、治安悪化神話社会論は構築されているのである。警察を悪玉にすることで、構築された解釈=物語にしかすぎないのである。治安を守ってくれる警察に大変失礼な物語である。

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by merca | 2008-10-05 09:47

治安悪化は本当である。


 浜井浩一が治安悪化していないと断言しているのは統計上、正しいとは言えないことを実証したい。
 
 戦後からの犯罪統計の犯罪発生率をよくよく分析すると、一般刑法犯の犯罪発生率は、1948年がピークで1999.91である。その後、減っていき、1973年に1091.21となり、最低になる。しかし、それ以降上昇し、2002年に2238.47となってピークとなる。そらから、突然下がりだし、2007年に1605.39となる。要するに、戦後間もなくは犯罪発生率は高く、治安が悪化しており、高度経済成長期を迎えて終わる頃には、戦後最低となり、バブル期やバブル崩壊後に発生率はあがりだし、治安が悪化し、2002年以降に突然下がりだす。強盗、強制わいせつ、傷害に特にこの傾向が認められる。窃盗、詐欺、横領、恐喝もほぼ同じような曲線を描く。ただし、殺人、強姦、放火は横ばいより減少気味である。いずれにしろ、戦後間もなくから1973年ころまでは発生率は低下し、治安はよくなっていたが、その後、発生率は上がりだし、治安が悪化し、2002年にピークを迎える。
 ここで、2002年以降に発生率が下がったのは、治安悪化を受けて国家が刑事政策として警察官を1万人増員し、職務質問が増えたことと関係していると考えられる。要するに、治安悪化は人為的に警察のおかげで抑制され続けているというのが妥当な見方だと思われる。放っておいたら、悪化していたのである。
 結論からすると、犯罪発生率に準拠して観察すると、治安は悪化し続けており、国家の刑事政策的介入が必要であるというのが、社会診断としては妥当である。
 反社会学講座も浜井浩一も芹沢一也の議論も、全体的事実からすると、事実ではなく、事実のある一部を選択化して構成された物語である。言わば治安悪化神話社会神話である。治安悪化神話社会神話に基づいて国家が刑事政策の手を緩めると、たちまち実害が国民に及ぶと考えられる。このことに気づかずに、治安悪化神話社会論を妄信して社会を論ずるブロガーは多い。
 
  参考
 ウィキペディアの日本の犯罪と治安
 各種データを参照されたい。


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by merca | 2008-10-04 13:33 | 社会分析