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反貧困論は神話、若者の貧困は自己責任!!

 物語や価値判断ではなく、事実として社会を語ることが流行っている。事実として社会を語るための道具が統計である。統計的根拠こそが客観的であり、信じるに値する科学的根拠であるという思想から、事実に準拠した言説が流行っている。
 
 このような事実主義という思想から、治安悪化神話批判論者、反社会学講座、俗流若者論批判、ニセ科学批判という新しいタイプの社会思想の潮流が形成された。実は、その手法は、小林よしのりに遡ると考えられる。つまり、小林よしのりは、歴史的事実に準拠して、左翼や親米保守を批判してきたからである。保守論壇雑誌のサピオこそが、この手の手法を多用してきた。
 事実はかくあるべし、従ってマスコミや評論家や学者の言説は間違っているとして非難する方法である。
 
 その事実主義をあからさまに露呈した特集が組まれた。それが、今回サピオが企画した、マスコミの「虚構」世論の「暴走」、という特集である。この特集には案の定、俗流若者論批判者である後藤和智も寄稿している。
 
 この特集の中で唯一目を引く記事があった。それは、人事コンサルタント海老原氏による、実は正社員数は増えていた! 「若者に職はない」はウソばかり、という記事である。
 要するに、統計的データからは、非正規雇用者が増加したのは、大学生アルバイトや主婦パートが増加したからであるという。高学歴化社会による大学進学率の増加である。また、日本の貧困率は、高齢世帯の増加によって上昇しているだけであるという。
 
 結論が面白い。少し補足して言うと、若者には正社員の職がないのではなく、正社員の組織労働に伴う「競争原理や殺伐とした職場」「人間関係」から逃避しているので、フリーターという非正規雇用を選択するというのである。つまり、職場の対人関係に耐えながら正社員になってそれなりの給料をもらうことを避けて、自己責任で、フリーターという自由な身分を選択し、ワーキングプアになっているだけの話なのである。
 自業自得である。端的にいうと、上司に命令されて自己のプライドが否定されるのが怖くて、民間企業の自由のない拘束的な組織労働を嫌っているだけである。そういう一部の人間の職業選択を、社会が悪いという神話で覆い隠すのが、反貧困論である。
 
 ワーキングプアは、単なる自己選択による自己責任であることを実証した当論文は非常に価値があると言えよう。湯浅氏が提唱する貧困の社会責任説=反貧困論という左翼神話が、見事に保守論壇雑誌であるサピオによって実証的に覆されたのである。

 しかし、反貧困論という神話が、現代社会において、貧困者や若者の自我を支え、慰め、弱者救済の福祉政策の正当性の思想的根拠として機能することは、否定できない。反貧困論は、社会的事実ではないが、社会思想としては優れているのである。その世直し機能は優れているのである。

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by merca | 2010-03-07 18:52 | 社会分析 | Comments(1)