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近代化の一貫性社会変動論

 アジア社会は、後発的近代化の道を辿っている。
 
 近代化とは、経済においては資本主義、政治においては民主主義、法においては人権主義と平等主義、教育においては学校主義、学問においては科学主義、思想においては言論の自由、宗教においては信教の自由、対人関係のスタイルは個人主義、軍事外交は平和主義、家族においては核家族主義となることをいう。それぞれの社会領域において、かくのごとき価値観が原理となる現象が近代化なのである。日本社会のように後期近代化社会=成熟社会に移行しても、あいるはポストモダンに突入したと主張しても、これらの近代的価値観は依然として根本原理のままである。
 
 どの社会領域から近代化するかは、国によって異なってくるが、資本主義、民主主義、人権主義、平等主義、学校主義、科学主義、自由主義、個人主義、平和主義、核家族主義は、近代的価値のセットとなっており、究極的には切り離すことはできない。これらは、近代化の尺度となり、これらが達成されている国は近代化されているのである。
 また、一つの社会領域が近代化すると、自らを維持するために、別の社会領域も近代化せざるを得なくなるのである。例えば、思想において言論の自由が進むと、政治の分野においても民主主義を採用ざるを得なくなってくる。言論の自由はあるのに、政治体制だけが全体主義という社会は不整合であり、その不整合を正すために社会変動が起きるわけである。
 
 ルーマンのシステム論的社会学では、各社会領域については、経済システム、政治システム、法システム、学システム、教育システム、宗教システムなど、自律的な機能システムとして記述する。こられの異なる機能システムが近代社会では、先述の近代的価値観でプログラミングされていることになる。それぞれの機能システムはコードによって自律的に閉じているが、一つの機能システムは、別の機能システムとの関係によって制限を受けることになる。
 また、異なる機能システムどうしの相性の良さを構造的カップリングという。例えば、資本主義をプログラミングした経済システムと民主主義をプログラミングした政治システムは相性が良く安定性がある。
 
 ここから一つの社会変動論を構築することができる。構造的カップリングによる社会変動論である。システム論的社会変動論である。定式化していうと、優位な社会領域システムに合わせて他の社会領域システムが構造的カップリングするように変動することになる。システム相互の力関係に左右されるものと考えられる。近代化については、近代的価値の一貫性による構造的カップリングが必要となり、そのような方向で各社会領域において社会変動が起るのである。
 
 アジア社会を見ると、中国社会では、政治システムが民主主義ではなく、近代化されていない。香港や上海で資本主義を採用しているが、政治システムと経済システムの構造的カップリングが悪く、経済が発展すると、自ずと民主主義国家に変わることになる。
 すでに、香港では自由選挙制を掲げて民主化を求めてデモが起っているが、システム論的社会変動論においては、当たり前の社会現象である。経済が近代化されると、他の分野も近代化されることになり、政治システムが民主主義を採用せざるを得なくなるのである。資本主義を維持するためには、自由選挙制=民主主義が必要である。また、民主主義を維持するためには資本主義が必要となる。
 
 世界は、資本主義、民主主義、人権主義、学校主義、科学主義、自由主義、平等主義、個人主義、平和主義、核家族主義に基づく近代化の方向に進んでおり、この流れをとめることは、今の人類にとっては不可能である。国連も準拠するこれらの近代的価値に共通する根本原理の正体は何か? これには私も哲学的関心を抱いてしまう。
 
 いずれにしろ、この流れからすると、究極的にはマルクス主義と国家主義は消滅することになり、非マルクス主義的左翼=ハイモダン主義が勝利することになるだろう。
 皮肉なことだが、ネット右翼も歴史に対する事実主義(科学主義)という近代的価値を採用する限り、自己の思想に不整合が生じ、近代的価値全体に取り込まれ、国家主義を捨てる方向に向かうことになるであろう。右翼にも左翼にも言いたいが、近代的価値という文化を越えて伝播する人類普遍の価値(と思われる)についての哲学的考察を怠ることなかれである。
 
 左翼であれ、右翼であれ、資本主義、民主主義、人権主義、平等主義、学校主義、科学主義、自由主義、個人主義、平和主義、核家族主義のうち、どれか一つでも近代的価値観を受け入れると、思想に論理的一貫性を保つために、近代的価値全体に染まってしまうことになるだろう。

 
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by merca | 2014-11-23 09:41 | Comments(1)