柄谷行人は、もはや世界的な哲学者である。その功績は、交換史観を提示したことである。交換史観とは、マルクスの唯物史観とは異なり、生産力と生産関係から社会変動を捉えるのではなく、交換様式から社会変動を捉える社会哲学である。
交換史観によれば、人間社会は、定住社会以降、共同体による交換様式A(贈与と返礼)、国家による交換様式B(略奪と再配分)、市場による交換様式C(商品交換)へと交換様式の中心が変動していき、資本=ネーション=国家の結合体として近代国民社会が誕生したのだという。この交換様式のあり方が社会構成体を規定する。さらに、柄谷行人は、交換様式Aを高次元で回復する交換様式D(?)なるものを発見し、それによって自由と平等が真に実現されるコミュニティが到来することを希望する。 ただ、交換様式Dは謎のペールに隠されており、それが何であるか、明確化できていない。同氏の「力と交換様式」という書物を読んでも、あまりはっきりとしない。世界宗教やボランティアなどに内在していると例示されているものの、交換様式Dによって何が交換されているのか具体的に言明していない。なので、ベールに隠されたままである。 交換とは常に何かと何かを交換することであり、その何か指し示すことなしに交換は定義できない。交換されるものを明確化しないと、交換様式Dは妄想のユートピアにしかすぎなくなる。 ずばり、私は、交換様式Dで交換されるものは、利他だと断言したい。利他(他者愛)だと考えると、世界宗教やボランティアにおける救済活動が交換様式Dであることは納得できる。人は人と利他を交換できる存在なのである。利他を通して、人と人はつながるのである。利他であるかぎり、交換様式Dは、極めて倫理的なものであると言える。 社会学者宮台真司は、人々は、共同体が空洞化したため、生活世界をベースとすることができず、感情が劣化していると指摘し、社会に警告を鳴らしている。人々の劣化した感情を回復させ、人々が自尊心を取り戻すことを可能にするのは、単純に従来の伝統的な共同体を復活させることではなく、柄谷行人が提唱する交換様式Dに基づく新しいコミュニティをつくることではないだろうか。 私は、その可能性と中心を探ることに使命を尽くしたい。 人気blogランキングの他ブログも知的に面白いですよ。 人気blogランキングへ
by merca
| 2025-09-27 22:01
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